重度の障がい者の生活を改善する
さまざまな取り組みに活用される
アニマの製品
重度の障がい者の方が少しでも
快適な生活を送るために
「本センター研究開発課では、市民サービスとして市内の高齢者・障がい者に対する工学的なサービスとして車いすや住居などをカスタマイズする際のサポート・助言とともに、メーカーや大学と福祉機器の共同研究や臨床評価という二つの業務を中心におこなっています。現在所属しているメンバーは合わせて11名。内訳はエンジニアが9名、作業療法士が2名です。エンジニアの中に建築士も2名含まれており、さまざまな案件へ対応しています。
重度の障がいを持つ方の場合、一般的な仕様の車いすや住居だと生活が困難にならざるを得ません。そこで私たちがさまざまな評価などをもとに、どのようにカスタマイズすれば生活が送りやすくなるかの助言や設計支援などをしています。アニマの製品についても身体機能評価を中心に利用しています。」(畠中氏)
同センターにおいて頻繁にご利用頂いている機器のひとつに、三次元動作分析装置が挙げられます。主に片麻痺の患者に対し、リハビリ訓練前後での歩容(※歩行の仕方のこと)の改善度合いを評価するために利用されています。現場の理学療法士が患者の歩容を見てば改善の度合いを判断するものの、最近は数字や画像などに基づくエビデンスが医療関係者や関係者の方から求められるようになっています。そこで本装置による数値データを活用しているところです。また、最近では患者へのリハビリの効果に対するフィードバック時にも利用されるケースが増加しています。機器から出力される可視化されたデータに基づいた方針を提示することで、しっかりと改善しているという安心感が得られるようです。
他にも、福祉機器の共同研究や開発などの場面でも本製品をご利用頂いています。例えば、最近では介護ロボットの開発支援などにアニマの床反力計を使用しています。人間をベッドから起き上がらせる動作をするロボットにおいて、起き上がりの際にロボット・人間のそれぞれがどれぐらい力を負担しているかという「免荷率」を計測するためです。ロボットがどれだけ人間の起き上がる行動に対してサポートをしているかを数値で表現できるため、開発に対して具体的なフィードバックができる点が大きなポイントです。
現場での問題に一緒に向き合い解決していく
最近では、データ計測の処理速度を高めるためのOS刷新を含め、三次元動作分析装置の新製品「MA-5000」を導入頂きました。
「スポーツなどでの歩容測定は計測時間が2、3秒のためデータ量はあまり多くありません。しかし、麻痺の症状を抱える患者の場合、計測に30~40秒近くかかるケースが少なくありません。そのため、データ量も膨大なものとなり、処理に多くの時間が必要となります。時間がかかるということはその時間分の人件費もかさむだけでなく、患者の満足度も低下します。その改善のために今回の刷新を図った次第です。近年、歩行分析の装置がさまざまなメーカーから出てきていて、簡単な装置を被験者の体につけて無線でデータ転送しタブレットで分析をおこなうような手軽なものもあります。
しかし、一般的な歩行分析では利用できても、麻痺のある患者さんを対象とする場合、例えば体に付けているマーカが計測時に麻痺のある手で隠れるといった事象が多々発生します。アニマ製品の場合、医療機関での実績も多いため、無線マーカを利用してカメラには映らない状況でも測定できる機能が盛り込まれており、データの抜けや飛びの修正も容易になっています。」(青野氏)
「また、私たちは研究に合わせてさまざまな測定をおこなうため、それまでと異なる計測方法を実施する場合にどうしても計測が困難になることが出てきます。しかしアニマは私たちがその状況下で『ここをこのように変えて欲しい』というリクエストや『こんな状況になっているのだけど、どうすれば解決できるだろうか?』という場面でも、ともに問題に向き合ってくれます。
例えば、医師の指示で2画面を一度に見ることができるよう測定結果の出力を変更したい時などに、最適な方法を相談して、プログラムを変更してくれるなどの解決を図ってもらえるので助かっています。
ほかにもアニマとは計測用の杖自体も共同で開発をおこなっています。杖の先にどれぐらいの荷重がかかっているかを歩容と合わせて測定できるため、被験者がどの程度、杖を支えとして必要としているのかというデータを導き出すことができます。リハビリ前後での経過を辿っていくと、改善している場合は杖にかかる荷重が減少していきます。そのため、歩行訓練等のリハビリの効果を客観的なデータとして見ることができます。」(畠中氏)
他部署からの計測依頼が前年比2倍超に
同センターの三次元動作分析装置周辺ではさまざまなオプション機能もご利用頂いています。歩行中の筋肉に流れる電気を測定してその活動量を調べる筋電計や三次元フォースプレートなどを組み合わせることで計測の幅を広め、精度を高めることに一役買っているようです。そして、ポータブルタイプの重心動揺計も導入頂いています。組み込み式の場合、設置されている場所に被験者の方が出向く必要があり、手軽な運用ができません。しかし、ポータブルであれば施設外にも持ち出すことが可能となります。重度の障がいを持つ方の場合、歩くのも困難なことが多いため持ち運びができることは大きなポイントになるようです。
このようにさまざまな製品を導入頂いている同センターですが、最近では計測の範囲が広くなり、計測の処理速度も上がったことで、他部署からの計測依頼が増加傾向にあります。
「動作分析装置の新製品を導入してからまもなく2年経過しますが、1年経過したところで、それまでの利用で見えてきた課題をアニマ社と共有し、対処頂きました。床反力計のプレート周りにわずかな段差があり、計測と計測の間の移動の際に被験者が引っかかる恐れがあるため、改修してもらうことで計測時の安全性が大きく向上しました。」(青野氏)
「ここまでの経緯や実績もあり、導入した機器に対するセンター内の評価は極めて高いものとなっています。今年に入って計測依頼が前年度比の2倍近くになっており、対応するための人的リソースが最近のもっぱらの課題なほどです。」(畠中氏)
これまで同センターからはアニマへ多くのリクエストを寄せて頂いており、そのリクエストのうちいくつかは過去に汎用製品に反映してきました。
「アニマ社にはソフトの改善など、今後も多くの相談をさせて頂くことになると思っています。そうした声をぜひ、製品開発に生かして頂きたいと思っていますし、実際にこれまでも多く反映されるところを見てきています。今後も一緒に共同開発などをおこないながら、その成果を外部にも発表をしていきたいですね。そうしていくことで医療・福祉業界の発展にも多少なりとも貢献できるのでは、と考えています。」として畠中氏からは今後のアニマとの関係に期待を込めたメッセージを頂きました。
横浜市総合リハビリテーションセンター
センター長:小川 淳
事業団設立:1987年
所在地:横浜市港北区鳥山町1770
事業概要:乳幼児から高齢者までの障がい又はその疑いがある方々に対し、地域の関係諸機関・諸施設との連携のもとに、専門的かつ総合的なリハビリテーションを行う。
畠中 規
研究開発課・担当課長
地域支援課・福祉機器支援センター担当課長
青野 雅人
研究開発課 工学技師