脳卒中の予防やリハビリでの回復をサポートするグラビコーダの存在

重心動揺計 グラビコーダ®  脳神経外科分野の導入事例

脳卒中の予防やリハビリでの回復を
サポートするグラビコーダの存在

石澤敦クリニック
石澤敦先生
東京都武蔵野市吉祥寺に立地する石澤敦クリニック。こちらの医院ではめまいや平衡機能障害の診断を目的に「重心動揺計シリーズ グラビコーダ GP-31」を約5年前からご利用頂いています。今回、その導入の経緯や実際の利用について医院長の石澤敦先生にお話を伺いました。

一人でも多くの患者を助けるために
未病段階で携わりたい

石澤敦クリニックが開院したのは2005年のこと。開院のきっかけは、もともと長きに渡り携わってきた脳外科医としての現場で抱えていた忸怩(じくじ)たる思いにあったと言います。

「毎日のように最終局面に入った重度の脳卒中の患者さんが病院に運ばれてくる。それらの患者さんと向き合い続ける中で感じたことは、もっと前の段階で気づいて対処していれば、状況はきっと大きく変わっていたはずということ。そのためにも生活習慣病の発症段階で向き合い、予防していくような関わり方をしていくべきではないのか。」(石澤先生)

脳卒中に至るには段階があります。何よりも重要なことは生活習慣病の発症自体を防ぐことですが、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を発症した早い段階で、体が発するシグナルを適切に受け止めて早期に予防措置を講ずることで脳卒中を未然に防ぐことができると石澤先生は強調します。しかしながら、そうしたスタンスで診断をする医師はまだまだ少ない状況。それであれば、自分が立ち上がって推進していかねばならないという信念を持ち、石澤敦クリニックは開院に至りました。

脳卒中に一度罹患すると、完全に元に戻るということは現実的に難しいといいます。そのため、石澤先生は診ている患者が将来、絶対に脳卒中にならないこと、そして一度脳卒中になった方が二度と再発しないこと、そうした状況を理想と掲げ、生活習慣病の患者に対しては日頃からかなり厳しく対峙しています。

グラビコーダの計測値が難しい診断もサポート

診療所を開設して石澤先生が分かったことは、いわゆる”めまい”を主訴に受診される患者さんが大変多いということでした。小脳や脳幹の脳血管障害、腫瘍などの器質的疾患で起こる中枢性めまいの診断に関しては、脳外科医としての経験から、臨床症状・神経学的所見により大まかな診断を導くことは可能です。さらに、自院で頭部CTを施行し、必要に応じて頭部MRIを含めた精査や加療をしかるべき医療機関に依頼するという道筋を立てることについても大きな問題はないという見解です。

しかし一方で、めまいの原因の多くを占める、良性発作性頭位変換めまいを含む末梢性・内耳性めまいに関しては、診断や鑑別に窮することもあったようです。このような状況の中、2012年に「動揺の軌跡」の実態を視覚的に認識できるばかりでなく、同時に、動揺パターンを計測値として表記できるグラビコーダの導入に関する提案をアニマの営業担当者がおこないました。導入時の選定においては、海外製品なども含めさまざまなものがある中で、学術的な裏付けをベースに設計されているという点、そしてJIS規格準拠の製品であることを重視し、アニマ製品の導入に至りました。

めまいという患者さんの漠然とした訴えが「動揺の軌跡」として記録され、それがさらに計測値で示される。そのことで、中枢性めまいと内耳性めまいを初療段階で鑑別しやすくなり、より精度の高い診療が可能となった、と石澤先生は言います。

「患者さんの訴える”めまい”には実に多くの病態が含まれていますが、当然のことながら、患者さん自らがその症状を的確に表現できるわけではありません。問診により患者さんが訴えるめまいを医学的な症状として把握し、さらにグラビコーダを追加施行することで、そのめまいの実態をより正確に明らかにすることができます。また、そのめまいの実態を視覚的に示すことができるため、どのような要因のめまいなのか患者さんの理解を助けることに役立つのです。リハビリの段階でどのような経過を辿っているかを定量的にモニタリングできるのも大きなポイントです。検査結果のレポートを2部出力し、1部をお渡しすると、数値による回復の軌跡を自分の目で見ることができるため、多くの患者さんが納得されます。」(石澤先生)

ただ、現状ではグラビコーダの採用は主に耳鼻科などにとどまり、脳神経外科での採用例はまだまだ多くありません。というのは、いわゆる基幹病院の脳外科診療科では、内耳性めまいや変性疾患による平衡障害を診断する機会はあまり多くはありません。また、小脳梗塞、小脳出血などの症状にグラビコーダを利用するといった使い方も考えられますが、救急車で搬送されるような患者さんの場合、そもそもグラビコーダで計測できるような状態ではありません。さまざまなめまいに対応しなければならない初療に関わる診療所レベルにおいてこそ、グラビコーダが威力を発揮しているのが現状のようです。

前庭障害の疑いの際に役に立つラバー負荷検査

石澤敦クリニックでは、グラビコーダと合わせてラバー負荷検査をオプションとしてご利用頂いています。主に前庭障害の疑いがあるとき、その原因を特定するために活用されています。ラバー負荷検査は閉眼状態で実施しますが、視覚が遮断されることにより、身体の典型的な揺れを検知することで前庭障害の判別が可能となります。

ラバー負荷検査の原理。閉眼によって視覚入力を遮断することに加え、ラバー負荷により体性感覚入力を撹乱することで、前庭入力の体平衡に及ぼす影響を評価します。

「良性発作性頭位変換めまいについては、聴機能障害がなく、ラバー負荷検査の閉眼検査で典型的な揺れが検出された場合は、当該疾患を自ずと絞り込むことができますが、この場合でも念のため、頭部CTを施行し中枢性めまいを否定しておくことが重要です。また、中高年の患者さんにおいては、小脳や脳幹の梗塞や出血の原因となる、動脈硬化の危険因子である生活習慣病の有無にも注意を向けることが必要です。当院で眼振検査や聴力検査まではできないため、良性発作性頭位変換めまいとして確信が持てないケースでは耳鼻科専門医への診察を依頼します。また、少しでも中枢性めまいが疑われる所見があれば、CTでは診断できない微小脳梗塞を除外するため、頭部MRIの追加検査を遅滞なくおこなうようにしています。」(石澤先生)

また、アニマのグラビコーダの特徴のひとつとして、健常者データを参考にできるという点が挙げられます。アニマでは現在、脊髄小脳変性症やパーキンソン病などでもさまざまなデータを収集しています。こうしたデータがより多く蓄積されていくことで、診断時に症状を絞り込むのに役に立つなど、活用シーンがさらに広がっていくことが見込まれます。

石澤先生からも、「小脳変性症や脳幹萎縮は画像だけで判断するのは初期段階だと不可能に近いのが現状です。神経内科では臨床的な見地から把握していきますが、神経疾患を診る私たちのような医院でもパターンを捕捉できるようになってほしい。当院ではすでにグラビコーダは診断時の欠かせないツールになっていますが、さらなる可能性があると信じています。」と今後のアニマの展開に期待を寄せて頂きました。

石澤敦クリニック

https://www.ishizawa-clinic.jp/
院長:石澤 敦
開院:2005年4月
所在地:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-21-2
グローリオ吉祥寺本町2階 206号
診療科目:脳神経外科、内科(生活習慣病管理)、外科

石澤敦先生プロフィール

1971年に順天堂大学医学部を卒業後、同大学医学部脳神経外科に入局。
同大学医学部脳神経外科助教授、東京都保健医療公社東部地域病院脳神経外科部長、田中脳神経外科病院副院長などを歴任後、2005年に「石澤敦クリニック」を開院。

※石澤敦クリニック様導入事例の「重心動揺計シリーズ グラビコーダ GP-31」の現行機種は、「ワイヤレス重心動揺計シリーズ グラビコーダ GW-31」です。

掲載日
カテゴリ
事例インタビュー, 重心動揺計シリーズ
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