靴式荷重トレーニング装置「ウォーキングアラーム」の導入により 患者様と現場の負担が大幅に軽減しました
レポート=関西医科大学附属病院/リハビリテーション科 森 公彦先生
当院は北河内地区の中核病院として、幅広い層の患者様を受け入れています。
リハビリテーションの現場もトレーニングに用いる機器の他、評価スペースと最新機器を設けて研究を行い、論文を発表しております。現在、生活期の脳卒中患者様を対象とした臨床試験に取り組んでおります。
-体重計による荷重トレーニングには限界がある…
荷重トレーニングは幾つかのパターンが存在します。患者様の状態によって1/3、1/2、全体重…と段階を経て荷重量を調整する部分荷重のパターン。神経疾患による麻痺でうまく体重がかけられない患者様に対しては、設定値を超えるように体重をかけるパターンなど。いずれのトレーニングも、従来は市販の体重計で対応していました。しかし、歩行時に荷重をかける際に介助者が一時的に離れることになるため、転倒のリスクがつきものです。勿論、状態が不安定な患者様ほどリスクは高まり、介助者の負担も大きくなりがちです。
このような問題点を解消してくれたのが「ウォーキングアラームMP-1」です。これまでも研究・評価の目的で導入した「ゲートコーダ MP-1000」によりアニマ社の製品のポテンシャルを認識しておりましたが、その廉価版が発表されたとのことで当院も日常のリハビリ現場に導入しました。
転倒リスクを軽減しながら荷重トレーニングができます
「ウォーキングアラーム」の最大のメリットはやはり転倒リスクの軽減でしょう。体重計を用いるパターンと比較して、患者様から離れる、目を離す動作・時間を最小限に抑えられるからです。そして「音」によるわかりやすさは患者様にも好評です。必然的にリハビリが円滑に進み、練習量が重要となる骨折後の部分荷重トレーニングには獲得の早期化が期待できると考えます。
一方、本製品で特に導入の効果を実感したのは、小脳失調の患者様において協調的に筋肉をはたらかせることが困難なケース。例えば、体重が踵側にかかりがちな場合、つま先側に体重をかけてバランスを取る方法を取りますが、ちょうど良い荷重の基準・目安がないため成否が理解しづらいものです。この点、踵・つま先の前後にセンサーを備えた「パターン3」は最適です。あらかじめ設定した荷重値に到達するように音が鳴るまで足先に体重をかけさせながら歩行練習を行えます。同時フィードバックとして音刺激が加わることで、従来よりもスムースなトレーニングが実現されます。
高いコストパフォーマンスで複数の使い分けも視野に
ここまで機能面についてお話しましたが、やはりリーズナブルな価格設定も大きな特徴です。
現状、上位機種「ゲートコーダ」は治療(日々のトレーニング)や研究の両方が可能です。また最小限の機能に絞った「ウォーキングアラーム」は日々のトレーニングで活躍…といった具合に使い分けています。
研究用の機種や他社のラインナップと比較すれば「ウォーキングアラーム」は気軽に導入できますし、予算にゆとりがあれば数・サイズを揃えるのも一手でしょう。
「ウォーキングアラーム」には3パターンの音の鳴り方がありますが、以下がそれぞれパターンについての私の所見です。
筋電図で見る「ウォーキングアラーム」の有効性(パターン3)
Before
小脳失調の患者様の右足の筋電図(前脛骨筋(上段)、腓腹筋(下段))。前脛骨筋と腓腹筋が同時収縮し、足関節の協調的な運動が生じません。
After
「MP-1」のアラーム音により、前足部への荷重を促すことで、前脛骨筋の過剰な筋活動が減少し、腓腹筋の筋活動が増大して、同時収縮が軽減し、蹴りだしを強めることができます。
体重計の訓練と比較すると、段差がなく連続した平地歩行が可能であるため、計量数値の精度が高まると考えられます。